神様のボート

日付:2009/04/20

いいわけ、逃げ道そんな部分を残しておくことはずるいようで大切なことかもしれませんね。いいわけもなにもなしに潔く生きていけたらいいですね。しかし生きているとあきらめなくてはいけないこともたくさんでてきます。そんな時小さないいわけが用意されていると、あきらめるきっかけにもなるしそれは確かに必要なことのような気がするのです。

この本を読んだ時たんたんとした母と子のささやかな美しい生活がキラキラしているのを感じます。でもそれと同時にそこはかとない絶望的な悲しさが奥底にあるようでそのギャップに戸惑ってしまいました。母・葉子の人生をかけた愛とともに引越しを繰り返す葉子と草子。葉子はかつての恋人が「どこにいても君を探し出すから待っていて」という言葉を信じ続け、恋人だけが自分のなじむ場所と決めて一つの所にとどまって馴染むことをしません。読んでいて何故だろう一つの所に居たほうが、実家のように分かりやすい場所に居たほうが恋人は探しやすいだろうにと思う気持ちを持つこともありました。しかし、葉子の気持ちも分かるような気がします。本当の意味での絶望から逃げているのかもしれません。そんな狂気のような恋愛に身をまかせて生きる葉子の娘草子は、そんな母を思いながらも少しずつ現実を歩いていきます。そんなたくましさにホッとしました。

いつまでも透明で美しいガラスのような葉子と少しずつ現実を踏みしめていく草子と両方の視点から毎日の生活が描かれています。そしてそんな現実と非現実が重なったような結末もこの本ならではかもしれません。決して幸せかどうかは分からないけれど、どこまでも透明な愛情を読んでみたいときはお勧めの作品です。

書籍情報

江國 香織 (著)、新潮社 (2002/06)

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